男性不妊といっても、その原因は精子をつくる過程に問題がある場合や、性生活上に問題のある場合など様々ですが、その男性不妊の9割以上を占める原因は「造精機能障害」です。
造精機能障害とは、精子が精巣でつくられる過程に何らかの問題があり、副性器(睾丸)にトラブルがあると、精液がつくられなかったり、精子の運動率が悪くなったりします。
まず、検査の第一歩は精液検査ですが、一定の禁欲期間をおいて採取された精液から、精子数、運動率、精子の形態などを検査します。
WHO(世界保健機関)の基準値を満たしている、もしくは近い数値であれば特に問題はありませんが、精液の状態は体調やストレスによって大きく左右されますので、何度か行いましょう。
原因の多くを占める造精機能障害は、軽度な乏精子症から無精子症まで程度は様々です。
精液検査を手始めにいろいろな検査を進めていくと、男性性器のどこに問題があるのかが分かってきます。
主な3つの原因
- 特発性造精機能障害
原因がこれといって特定できないものの精子がうまく作れない状態。 - 精索静脈瘤
精巣から出ている静脈にこぶができ、血液が逆流して陰嚢があたたまり、精子がうまく作れない状態。 - 染色体異常
染色体異常があると、精巣が精子を作れるほど成熟していなかったり、あるいは精巣の中で精子を作る過程がうまく機能していない状態。
その他の原因としては、ごく少数ですが「両側停留精巣放置」「耳下腺炎性精巣炎」などがあります。
胎児の精巣はまだ体内にあり、生まれることになると、陰嚢の中に自然におりてきます。
ところがまれに、生後数か月たっても精巣がおりてこないことがあり、これを「停留精巣」と呼びます。
精子をつくるには、体温よりもやや低い温度が適しており、そのために陰嚢が体からぶら下がる形になっています。
精巣がおなかの中にあるとあたためられて精子をつくる力が衰えてしまいます。
「耳下腺炎性精巣炎」は、おたふくかぜによって引き起こされた精巣炎をいいます。
おたふくかぜをひいた際に、ごく少数ですが精巣炎を併発してしまい、精子をつくる組織にダメージを受けることがあります。
造精機能障害といっても軽い乏精子症ならば、薬物療法で改善される場合がありますが、重度の乏精子症や無精子症は薬物の効果はあまり期待できず、体外受精や顕微授精を検討する必要があります。
そのため、検査を受けて精子がどのくらいつくられているかを確認することが不可欠となります。
なお、精子の数が、1ml中2000万個を下回る場合を乏精子症といい、数百万個以下になると人工授精での妊娠は難しいと判断され体外受精の適用となり、さらに数が少ない場合は、顕微授精を行います。
造精機能障害以外の原因としては、精巣できちんと精子ができているのに精路に問題があって精液の状態が悪いことがあります。
通常、精巣でつくられて精巣上体に貯蔵された精子は、精管、精嚢を通って尿道に入り、ペニスの外尿道口から射精されます。
この、精子を運ぶ輸送路(精路)のどこかに問題があるケースを「通路障害」と呼びます。
生まれつき精管がなかったり、幼少時に鼠径ヘルニア(脱腸)の手術を受けた際に誤って精管を縛られてしまったり、あるいは、以前患った精巣上体炎や精管炎の後遺症で、精管が塞がっていたり、狭くなって通りが悪くなっていたりと、様々な原因があります。
問題の部位を突き止めて、その部位が小さければ、精管と精管、精巣上体と精管をつないで精路を通す治療を行い、精路がきちんと通って精子が射精できるようになれば、自然妊娠も可能になります。
また、生まれつき精管が全くない場合などは、精巣上体から精子を採取して顕微授精を行います。
自分たちの性生活を見直しながら、根気よく問題点を改善していくのが大事です。