「不妊症」というと、女性側の症状ばかりがクローズアップされがちですが、不妊の原因の約半分は、実は男性にあると言われています。
男性の精子は、陰嚢の中にある精巣で作られます。
その後、形成された精子は精巣上体を通って、受精能力を高めるのです。
精嚢や前立腺部分で精液になり、射精するときには、精管を通って、尿道から外へ排出されます。
精子の製造機能や、通り道に不具合がある場合には、いわゆる「男性不妊」と言われる状態になります。
男性不妊の原因で一番多いのは、乏精子症です。 乏精子症とは、精子の数が非常に少ない状態を指します。 乏精子症の診断は、WHOによって定められた精子濃度、精子運動率、奇形率などの基準値をもとに行われます。
一般的には、自然妊娠には精子の数が1ml当たり4000万個以上(2000万個以上は正常とされています)、運動率が50%以上あることが望ましいと考えられています。 この精子の数が1000万個以下の場合、乏精子症となります。
乏精子症の主な原因には、以下のようなものがあります。
(1)精索静脈瘤
(2)造精機能障害
(3)原因不明
(1)精索静脈瘤は、精巣の静脈の血液が逆流し、こぶのようなものができた状態です。
不妊の男性の25%~40%に見られると言われています。
静脈瘤は、左の陰嚢にできることが多いため、静脈瘤がある場合には、左右の陰嚢に違いがあります。
触ったときには静脈瘤があるとモコモコした感触になります。
また、静脈瘤がある場合、長時間座っていると、静脈瘤が圧迫され、血流が悪くなり、痛みがでてきます。
こういった症状がある場合には、静脈瘤がある可能性があります。
(2)の造精機能障害は、精子を作る機能に問題がある状態です。高熱を出したりすると、造精機能に影響すると言われています。
(1)あるいは(2)のいずれにも当てはまらず、詳細に検査をしても、原因が不明のケースもあります。
精索静脈瘤がある場合、低位結さつ術という手術法があります。
鼠径部を2cmほど切って、顕微鏡の中で静脈を結び、こぶをなくすという方法を取ります。この手術は、局部麻酔で行うことも可能です。
造精機能障害の場合には、ビタミン、酵素活性剤、末梢循環増強剤、漢方薬や性腺刺激ホルモンの注射など、精巣の薬物刺激療法も精子改善に効果があります。
乏精子症のケースでは、AIH(配偶者間人工授精)、体外受精、顕微授精によって妊娠は可能になります。
男性側に上記のような問題があり、女性側には問題がない場合は、検査の結果を踏まえて適切な治療方法を早めに選択することをお勧めします。
男性側が医療機関への受診を躊躇している間に、女性側が高齢になってしまい、若いときだったら体外受精で妊娠が可能だったのに、卵巣機能の低下や閉経を向かえてしまい、体外受精での治療も受けられなくなるケースもよくあります。
近頃は男性不妊専門医も増えていますので、医療機関に相談しながら適切な治療を受けることが大切です。