近年、日本では、女性の社会進出に伴い、結婚年齢の上昇と高齢出産の増加が顕著に見られます。
女性がいきいきと自己実現をできる社会になることは、言うまでもなく歓迎すべきことです。
しかし、なにかを失わないと社会的な自己実現ができないとしたら、それは本当に成熟した社会と言えるでしょうか?

日本では、女性の社会進出を称揚してきました。
しかし、社会進出に伴って、女性の人生設計が変わってくることについては、ほとんど語られてきませんでした。
結婚はいつでもできますが、出産、子育てには、期限があります。性はいつまでも子どもを生めるわけではありません。

晩婚化と不妊治療

女性の社会進出の結果として、晩婚化の傾向が見られるようになりましたが、子どもを持てる年齢に限りがあることを、多くの女性は知らずに年齢を重ねてきました。
妊娠率は加齢とともに低くなっていく傾向になることは、最近マスコミでも取り上げられるようになってきましたが、まだまだ加齢による妊娠への影響は認識されていない感があります。

不妊治療の技術はめざましく進歩しています。
しかし、残念ながら女性の体は年齢と共に変化するものであり、出産時期を遅らせることによるリスクは決して少なくありません。医学が発展したからと言って、いつでも妊娠ができるわけではありません。

不妊治療の成功率は、年齢とともに低下してきます。
妊娠率は、20代後半には早くも下がり始めます。
ヨーロッパで行われた研究によると、19歳~26歳の女性では、自然妊娠率の確率が約5割であるのに対して、27歳~34歳では4割、35歳~39歳では3割程度に落ちてしまうそうです。
不妊治療を行った場合でも、32歳ごろから成功率が下がり始めるというデータもあります。

高齢化による卵子への影響も、妊娠率に大きく影響します。
老化した卵子は、生殖力が落ち、染色体異常を持ったものの割合が増えてきます。
染色体異常を持った卵子が無事に受精し着床しても、心音が聞こえるまで発育できなかったり、出産まで至らず流産になったりする確率が高くなります。
せっかく妊娠してもこのような経過になってしまうと、母体には大きな負担になります。
残念ながら日本では、不妊治療については、あまりオープンに語られることがありません。
不妊治療を受けること自体を躊躇するカップルも少なくありません。
治療そのものに強い抵抗があり、適切な治療時期を逃してしまった結果、妊娠が困難になってしまうケースもよく見られます。

しかし、年齢とともに妊娠・出産は徐々に難しくなります。
子どもが欲しいと思ったら、妊娠適齢期を逃す前に、人生設計を考えて準備することが大切です。
特に晩婚の方の場合、迷っている間にも、卵子は老化して行きます。
治療は早めに開始することが重要です。