日本産婦人科学会の定義では、自然流産を連続して2回繰り返す事を「反復流産」と呼び、連続3回以上繰り返す状態を「習慣流産」と呼びます。
また、「不育症」は流産を繰り返すこと以外に、早産や死産などによって生きた赤ちゃんを抱くことのできない場合を総称しており、同義語ではありませんが、広義においては「習慣流産」と「不育症」は同じ意味合いを持ちます。
習慣流産の原因は非常にたくさんの要素があり、複数の原因にまたがっている場合もあります。
また、原因を特定することは良いでなく、むしろ原因をはっきり特定できない場合のほうが多い状況です。
それでは、どのような原因があるのでしょうか?
- 遺伝因子
受精した受精卵にもともと何か染色体の異常があり、流産の原因になる場合です。
夫婦ふたりとも、またはどちらかに染色体の異常があり、結果として受精卵に染色体の異常が生じて流産するケースです。
しかし、夫婦ふたりとも、またはどちらかに染色体の異常があっても子どもに100%遺伝するとは限らず、今後の解明が待たれます。
また、着床前診断を行うことにより受精卵の持つ染色体異常の確認が移植前に可能なため、遺伝因子による習慣流産の場合は着床前診断は有効な治療法の一つです。 - 代謝・内分泌学的因子
代謝・内分泌学的な因子については、はたして単独で決定的な原因になっているかどうか、まだはっきりしていない部分が多く含まれています。
ほかの要素と相まって流産の原因になっていることも考えられますが、代表的な因子について説明します。
黄体機能不全の人は、排卵した後受精し着床する時期のホルモンの出方が悪くなり、これが流産の原因になるといわれ、この場合、黄体ホルモンを補充します。
甲状腺機能に異常のある人の場合、特に低下症の人は流産を起こしやすいとされ、そうした場合は、甲状腺ホルモンをコントロールするために必要な処置が行われます。
高プロラクチン血症は、不妊や初期の流産の原因になるといわれ、薬を服用します。
糖尿病も習慣流産の原因になるという説がありますが、はっきりしていません。 - 子宮因子
子宮の奇形があると着床しづらかったり、着床した卵子が育ちづらいことがあります。
100%の原因ではありませんが、子宮卵管造影で形を見て、場合によっては妊娠が継続できるように手術を行う場合もあります。
子宮筋腫も、その発生部位や大きさによって流産の原因となることがあり、手術でとり去ることもあります。 - 免疫学的因子
自己免疫異常とは、自分の体のある部分に対して、抗体をつくってしまうことをいいます。
特に「抗リン脂肪抗体」が流産につながるのは、血栓をつくるからだといわれています。
受精卵が子宮にくっつくのを防げる、あるいは受精卵そのものを障害するという説もあります。 - 細菌学的因子
感染症によって流産を起こすことがあります。
クラミジア、その他の感染症がないかどうかを夫婦ともに調べ、もし見つかった場合には夫婦ふたりの治療が原則です。
習慣流産は、生殖免疫学的な研究が進んできていることから、少しずつ病態が解明されつつあります。
習慣流産が心配な人も、あきらめず治療に前向きにとり組んでいきましょう。