S.Hさん

自分のやったことで人に喜んでもらえたという充実感

卵子提供。それはまだこの日本ではまだマイナーな子供を授かるための一手段です。その響きを耳にしてもなかなかピンとは来ないと思います。初めは、私もその中の一人でした。卵子提供そのものの存在は不妊治療を行っていた知人から聞いたことはありました。

『日本ではそれほど行われていないけれど、そういった方法も存在するのだ。』と正直に言いますと、それを聞いた時には、「自分の卵子を他の人の精子と受精させ、更に他の人の卵巣に移す。」という一連の流れに違和感を感じたのは事実でした。しかし、その違和感は、子供を授かろうと健気に努力する知人の姿を見つめることによってどんどん消えてゆきました。知人は卵子提供という手段は取らなかったものの、どうしても子供を産みたいという強い信念がありました。

私には出産経験がありません。しかし、一人の女として愛する人の子供を自分で産みたいという願いは至極当然であり、とても強いものなのだと痛感しました。今思い返せばそれが卵子提供ドナーに登録したきっかけだと思います。

実際にドナーに登録し、協力して欲しいというお話をいただいた時、自分でも不妊治療を頑張る方の力になれるのかと思い、嬉しかったです。と同時に、実際に役立てる実感というものはあまりありませんでした。おかしな話かもしれませんが、韓国の地に着いてさえそれは漠然としたものでした。それよりも『もし、上手くいかなくてレシピアントの方に迷惑をかけたらどうしよう』という不安の方が大きかったです。

しかし、会社の方からの万全のフォローと様々なお言葉をかけてくださったことが、人の役に立っているという実感と不安の軽減になり、滞在中は本当に良い時間を過ごせました。

ですが、やはり本当に私が人の為になれたのだと感じたのは、会社の方を通してレシピアントの方から『本当に感謝しています。』というお言葉をいただいた時でした。その時に本当に悩んでいた不妊の方の助けになれたのだなぁとしみじみと実感しました。

人の為に何かしたいという思いは多かれ少なかれ人間の根底にある感情だと思います。そして実際にそれを行動に移す人はその中でも限られています。自分がそういった人間になれたという達成感、自分のやったことで人に喜んでもらえたという充実感、それを体験出来たことは今でもとても貴重だと思っています。もしも、同じ気持ちで足踏みをしている方がいたら是非ともドナー登録していただきたいです。きっと自分の中で何かが変わると思います。