保険適応となった不妊治療

梅雨入りが発表されてから、雨をしばらく見ておらず、何だかすごく暑い日々が続いておりますが、皆様元気に過ごされておりますでしょうか?とにかく水分補給(ナトリウムとカリウムが含まれているもの)をこまめに行い、クーラーを積極的に使い、熱中症には気を付けていきましょう!

さて今回は、2022年4月から保険適応となった不妊治療について、振り返りをしていきたいと思います。

「40歳、43歳の年齢制限」と「移植の回数制限」

自由診療ではなく、三割の自己負担額で保険診療として受けられることになった不妊治療。「助成金による補助より自己負担額が増えてしまった」等の声も聞かれますが、「不妊は治療する必要があるもの」という認識を広めるという意味では、非常に効果的であると思います。社会的負担も大きい不妊治療が「治療として必要なもの」と、少しでも多くの人に認識されるように願うばかりでございます。(そもそも国としての価値が下がり続けていて、将来性も低い日本で、子どもを産み・育てようとしてくれている人々を、国民全員が全力で感謝/サポートしていくべきだと、私は考えます。)

制度として少々ややこしいところもありますが、大軸としては下記二つが挙げられます。

「40歳、43歳の年齢制限」と「移植の回数制限」

「年齢制限」につきましては、治療開始の年齢が適応になります。区分としては、「40歳未満(39歳まで)」「40歳以上43歳未満」「43歳以上」となります。

やや厳しく感じられる年齢制限ですが、2018年の日本産科婦人科学会の発表によると、胚移植当たりの生産率(出産率)は30歳で34%、35歳で30%、40歳で17%、45歳で2.8%と、年齢の上昇とともに生産率は下がることが明らかになっております。「移植の回数制限」も同様で、闇雲に回数制限を設けているわけではなく、移植回数に伴う妊娠率の低下というデータに基づいております。不妊治療という医療行為を平等に提供するあたり、ある程度データに基づく制限は必要であると思います。

母体への侵襲

ついつい妊娠で頭がいっぱいになってしまいますが、「出産」は母体への侵襲が大きく、命を失うリスクがあるものです。(45歳以上の妊娠は合併症や帝王切開分娩のリスクが、30~34歳郡の2倍前後上昇するというデータもあります。) 「女性の身体を守る」制度であることも、頭の片隅に置いていただければと思います。

移植により回数がカウントされる

人工授精・体外受精共に、移植により回数がカウントされます。その為、移植まで到達することができなかった採卵等は、引き続き保険適応となります。ただ、あくまでも妊娠する為の治療ですので、移植可能な胚盤胞がある状態で次の採卵周期に入る場合は、保険適応外となります。(つまり貯卵はできないことになります。)

「保険適応外の先進治療を実施する場合は、その周期の保険適応内の治療も実費になる」というルールもございますので、保険適応枠を上手に利用する必要がありますね。

コップの水理論

手放しに喜べない制度かもしれませんが、「三割負担で治療ができる」というのは素直に喜んでもいいのかなと。マネジメントの父と呼ばれるピーター・ドラッカー氏のコップの水理論のように、物事は捉え方次第で変わります。「6回/3回まで移植できる」「43歳まで保険が使える」とポジティブに捉え、明るく不妊治療に臨めるといいですね。

〈参照HP〉

https://www.taiyo-seimei.co.jp/net_lineup/taiyo-magazine/women/010/index.html

https://www.haramedical.or.jp/introduction/results/y2022

https://www.kyushu-u.ac.jp/f/31629/17_10_26.pdf

https://www.ncchd.go.jp/hospital/pregnancy/column/kourei.html

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