甲状腺ホルモン(TSH)の重要性
こんにちは。
春ですね。通勤途中に沈丁花の香りがしました。
さて、本日は甲状腺ホルモンについてお話を致します。
皆様ご存知の通り、甲状腺ホルモンは全身の代謝を維持するのに重要なホルモンです。
甲状腺ホルモンが低下すると、活動性が鈍くなり、昼夜を問わず眠く、全身の倦怠感が強く、記憶力や計算力の低下がみられます。
また、体温が低くなり、皮膚が乾燥して、夏でも汗をかかなくなります。
体重が増えたり、無月経になることもよくあるそうです。
弊社ではハワイのプログラムを選択されたレシピエントの方には、移植前に必ずTSHとプロラクチンの検査を行っていただきます。
TSHの数値が高い方には、2.5以下になるように、お薬(チラージン)にて数値のコントロール行っていただくようにクリニックから指示があります。
移植後、妊娠確定し数値が安定したら内服中止で問題ないといわれています。
では、何故TSHの値をコントロールする必要があるのでしょうか。
それは、下記のようなことが考えられるからです。
<甲状腺機能低下症が母体に与える影響>
甲状腺機能低下症があると流産、早産、胎盤早期剥離、産後甲状腺炎の頻度が増えてくると考えられています。ただし流産や早産に関しては甲状腺機能低下症とほとんど関連がなく甲状腺抗体陽性(橋本病)と関連が深いとの考え方もあります。
妊娠糖尿病、前置胎盤、帝王切開術率などは甲状腺機能低下症でも頻度は増えません。
<母体の甲状腺機能低下症が胎児に与える影響>
甲状腺機能低下症の母体から生まれた児のIQが軽度低下するという報告や、母が甲状腺機能低下症の場合、思春期後半での抗不安薬や抗精神病薬服用する人の頻度が上がるという報告、母体に甲状腺機能異常があると、児がてんかんとなる確率が高くなるという報告などがあり、甲状腺機能低下症があると児の精神や神経の発達に影響する可能性を示唆するものと思われます。
甲状腺抗体の有無にかかわらずTSHが高いと流産率が上昇し、TSHの値が2倍になる毎に流産率が60%ずつ上昇する(1.6倍になる)という報告があります。
甲状腺ホルモンが胚の成長や黄体の機能に影響しているため、その機能の低下が流産に関与している可能性があります。また、甲状腺ホルモンはNK細胞などの流産に影響するような免疫反応の調整因子となっているともされているため、そのような免疫の状態が流産につながっているのかもしれません。
児に対する母体の甲状腺機能低下症の影響を小さくするためにも、甲状腺機能低下症を甲状腺ホルモン薬の補充でしっかりとコントロールをしておくことが無難と考えられます。