昔は不妊症というと、原因は女性側にあると考えられがちでしたが、実は不妊の原因の半分は男性にある言われています。
そのため、無駄を省くためにも不妊検査は最初からご夫妻で受けることが推奨されます。
男性不妊も、治療さえすれば対処できるものから、治療が非常に難しいケースまでその程度は様々です。
最近の不妊治療の目覚ましい進歩によって、男性不妊のうちの多くのケースが治療可能となりました。
精子の数が非常に少ない、精子の運動率が極端に低いなどで治療が難しかったケースも、進歩した生殖医療技術により、男性不妊の80%は治療が可能と言われるほどです。
それでは、男性不妊にはどのような種類があるのでしょうか?
男性不妊には大きくわけて2つのタイプがあります。
精子の数が少ないものと、精子の動きが鈍いものです。
健康な男性の場合、1ccの精子の数は1~2億匹でそのうちの70-80%が元気なしっぽを振って前進運動をしています。
この状態なら、たくさんの精子の中で元気な精子が卵子に突入し、受精が可能になるわけです。 男性不妊の場合は、これより数値が低くなります。 射精で出る精液そのものの量が少ないのを精液減少症、精子の数が少ないものを乏精子症といいます。
中には精液の中にまったくいない無精子症の方もいます。
一方、動きの悪いものを精子無能力症といいます。
精子の数は少なくても、ゼロではなければ妊娠も可能なのでは、と思われるかもしれませんが、現実にはそれほど期待できません。
精子の数が1ccあたり、3000万以下、または運動率が30%以下という方は、やはり早期に積極的な治療をする必要があります。
ところでなぜこのように精子の数が減ったり、運動率が悪くなるのでしょうか?
その原因が特定できるのはむしろ少数で、男性不妊の6割は原因不明と言われています。
原因の分かっているものとしては、まず、尿道炎や、前立腺炎などの尿路感染症があげられます。
また、膿精子症といって、精液の中に白血球が増え、受精を妨げることもありますが、これも前立腺や精嚢にクラミジアなどが感染して炎症を起こすのが原因でないかと言われています。
他に、精子の数や運動率を悪くする原因として多いのが、精索静脈瘤と言われる疾患です。
精巣(睾丸)から腎臓へと血液が流れている、その弁がうっ血し、血液の一部が膨れてこぶのようになる病気です。
すると陰嚢内の血液の流れが悪くなって精巣の温度が上昇し、精子の数や運動率が低下するのではないかと考えられています。
しかしこれら以外にも、原因が分からない男性不妊も多いといわれています。
また、男性不妊=精子の状態が悪い、と思われがちですが、男性の中には精子の正常な人もいます。
その中には精神的な悩みが原因で不妊症になっていると思われる人やセックスレスのご夫妻もいます。
そういう場合には、一般の不妊治療を始める前にまずご夫妻でカウンセリング等を受け、原因を取り除く必要があります。