ロキタンスキー症候群とは、先天的に女性の腟が欠損し、機能性子宮を持たない疾患です。
ロキタンスキー・キュストナー・ハウザー症候群、メイヤー(マイヤー)・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群とも呼ばれています。
ロキタンスキー症候群は、先天的に女性の腟の一部、または全部が欠損した腟欠損症の一種で、その中で最も頻度の高いものです。約5000人に一人の割合で発症すると言われています。
ロキタンスキー症候群の患者には、先天的な原因により腟や子宮の異常が見られますが、染色体は正常女性型です。また、卵巣もほとんど正常に機能しており、女性ホルモンも正常に分泌されています。 外陰部も正常で、女性としての二次性徴も正常であるため、幼少期~思春期頃までは発見されないケースがほとんどです。
この疾患は、胎生期におけるミュラー管の発育障害が原因であると考えられています。
胎児が母親の子宮の中にいる段階で、女児の場合は、
(1)卵巣
(2)腟・子宮・卵管
(3)外陰部
が別々に発生し、本来はこれらがうまくつながります。
このうち、(2)腟・子宮・卵管の発生の異常は比較的起こり易いものです。腟・子宮・卵管は、ミュラー管という組織が分化して形成されますが、このミュラー管の分化が行われずに発生不全が起き、正常な発生ができなくなることで、膣欠損の状態になると推測されています。
はっきりしたことはまだわかっていないのですが、血管に異常が起こってミュラー管へ血液が流れなくなることで、ミュラー管の分化が正常に行われなくなることが原因と言われています。
(1)卵巣と(3)外陰部は正常に発生しますが、先天的に子宮や膣の異常がさまざまな程度に見られます。
上記のように、ミュラー管の分化がうまく行われないと、子宮は痕跡を残す程度にしか発育しない状態になります。
また、腟も、長さが2~3センチと短い、あるいは全くない状態となります。これが腟欠損症です。
膣欠損症の患者のうち、95%は、月経を起こし得る機能性子宮を持ちません。
前述したように、膣の欠損、子宮の発育不全以外には、表だった症状はないため、月経を迎える年齢となったにもかかわらず、月経が来ないことで、多くの場合はこの疾患であることが発見されます。
婦人科、産婦人科の医師による診断は、内診のほか、超音波検査、MRI検査、基礎体温の測定、血液中ホルモン検査、腎臓と尿管の検査、骨のレントゲンなどを行います。
ロキタンスキー症候群の患者は、子宮が機能していないため、月経はありませんが、通常卵巣からの排卵はあります。ただし、卵巣から排出された卵子は、体内で死滅して吸収され、体外に排出されるということはありません。
子宮が機能していないため、自然妊娠で出産をすることはできませんが、卵巣の機能が正常であれば、体外受精により受精卵を作ることは可能です。
体外受精と代理出産を用いることが、ロキタンスキー症候群の患者にとって、遺伝的な自身の子どもを持つことができる唯一の方法です。