脂肪幹細胞で精子を活性化

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精子活性化

さて、岐阜大と名古屋大の研究チームが、精子の運動性を向上させる新しい方法を突き止めました。
その画期的な方法が説明された記事を、ご紹介したいと思います。

脂肪幹細胞で精子活性化 岐阜大と名大、特許出願

岐阜大と名古屋大の研究チームが、脂肪に分化する前の幹細胞(脂肪幹細胞)が精子の運動性を向上させ、受精率を高めることをブタの脂肪幹細胞や精子を使った実験で突き止めた。10月末、脂肪幹細胞を用いて精子を活性化する技術の特許を両大学共同で出願した。この技術はブタの夏季不妊症対策に有効であるほか広く応用可能と見込んでおり、希少種の保護や人の男性不妊症治療に役立てることを目指している。

チームは岐阜大応用生物科学部の村瀬哲磨教授(獣医臨床繁殖学)、名大医学系研究科の山本徳則准教授(泌尿器科臨床再生学)らで構成。村瀬教授によると、人工授精をしたブタの受胎率は夏場は春先の半分以下に下がる。精子を作る種雄豚の精巣は体温より3~5度低い環境下で機能するが夏場の高温によって正常な精子の形成が阻害され、運動しない精子が増えるのが不妊の一因という。

ブタでの実験は8月に実施、運動性の低下した精子に腹部の皮下脂肪から分離した脂肪幹細胞を混ぜて観察すると、受精につながる前進運動をする精子の割合は当初の約15%から5時間後には約38%へと高まった。卵子も使って体外受精を試みると未処理の精子は受精率がゼロだったが、幹細胞と混ぜた精子は約82%まで上昇した。

原因は未解明だが、精子が幹細胞に接触すると泳ぎに用いるべん毛の動きが活発になるという。従来、運動性の悪い精子は廃棄されており、季節的に豚肉の生産量が落ちる一因だった。村瀬教授は「人工授精に幹細胞を用いることで、年間を通じた豚肉の安定供給につながれば」と話す。

チームはブタの脂肪幹細胞を用いると牛の精子も運動が活発になることも確認しており、今後、美濃柴犬や木曽馬など希少種の繁殖にも活用を模索していく。

山本准教授によると、脂肪幹細胞は人の生殖医療への応用も期待される。不妊カップルの約3分の1は男性に原因があり、男性不妊の2~4割は精巣を包む静脈が滞って精巣の温度が上がる精索静脈瘤という病気で精子の運動が鈍くなるのが関係しているという。

山本准教授はすでに尿失禁治療の臨床研究で人の脂肪幹細胞を活用、傷んだ筋肉を再生させて成果を挙げている。「人の生殖医療にも幹細胞の導入が認められれば不妊症治療が大きく前進する可能性がある」と話している。

【脂肪幹細胞】 自己複製可能で筋肉や血管、神経、骨など多くの組織に分化し得る細胞。2001年に発見された。脂肪組織の間から採取する。人の場合、移植に用いられる骨髄幹細胞と比べると同じ質量当たり200倍が存在、高齢者にも応用が可能。採取が容易で数も多いため、再生医療での活用が注目されている。尿失禁治療のほか脂肪への分化を利用した乳房形成などで臨床研究が行われている。今のところ動物、人を問わず生殖医療への応用例はない。

現在は豚の脂肪幹細胞と精子を使った研究で具体的成果が出ていますが、すでに尿失禁治療の臨床研究で人の脂肪幹細胞を活用していることから、人の不妊治療への応用も大いに期待できます。
男性不妊の割合が増えている今日、この新たな発見は、男性不妊治療への希望の光になるのではないでしょうか。

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